趣味の部屋

音楽・映画・サッカー・ファッションなどについてのブログです

2015年上半期 劇場公開映画ベスト10

1.アメリカン・スナイパー
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2.はじまりのうたf:id:Cozy0823:20150701031417j:image

3.バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
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4.花とアリス殺人事件
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5.シェフ
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6.6才のボクが、大人になるまで
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7.フォックス・キャッチャー
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8.百円の恋
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9.君が生きた証
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今年上半期は映画館で観れた本数はそれほど多くないんですが、沢山の傑作を劇場で観れたと思います。特にランキングの上位3作品は全てBlu-ray購入予定リスト入りするくらい個人的には感銘を受けた作品でした!

もちろん凄く観たかったのに映画館で公開中に観ることが出来なかった作品も軽く10作品以上ありますし、今上映されている作品で6月中に観る予定だったのに未見の作品もあります。最後にそのリストを列挙したいと思います。

・福福荘の福ちゃん
・嗤う分身
・アンダー・ザ・スキン 種の捕食
・さよなら歌舞伎町
・薄氷の殺人
・味園ユニバース
・プリデスティネーション
・パレードへようこそ
・海にかかる霧
・龍三と七人の子分たち
・インヒアレント・ヴァイス
・イミテーション・ゲーム
・Mommy/マミー
・カフェ・ド・フロール
・駆け込み女と駆け出し男
・ブラックハット
マッドマックス  怒りのデスロード
・きみはいい子

星野源「SUN」

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5月27日発売になった星野源くんのニューシングル「SUN」。本当に素晴らしい楽曲揃いで、源くんが新たなステージにステップアップしたことがよくわかる作品に仕上がっています。今回はこのシングルの全曲の解説と感想の記事を書いてみようと思います。

1曲目「SUN」
まずイントロのギターのリフ・カッティングがメチャクチャ格好イイ‼︎個人的にこのようなギターのカッティングによるイントロは大好物なんですけど、このイントロや曲全体を通してのリズムはソウルミュージックと70年代ダンスミュージックの影響下にあることは明白ですね‼︎前作「CRAZY CRAZY/桜の森」で目指したであろうリズムやビートに重きを置いた作品作り(特に「桜の森」での黒っぽさや大胆なストリングスのアレンジ、メロディー)をより深化させたような楽曲に仕上がっていると思います。それでいてちゃんとポップソングとしてもキャッチーで口ずさみやすいという素晴らしい曲です。歌声も少し艶っぽくてイイですねぇ。あと歌詞も源くんが大好きなマイケル・ジャクソンを連想させるような部分(「HEY J」と呼び掛けられているのはマイケルのことだと思います。後の方の歌詞で「月の上も すべては思い通り」とありますが、これはマイケル・ジャクソンの十八番ムーン・ウォークのことでしょうし)が見受けられて、マイケル・ジャクソンが「いつでもただひとりで 歌い 踊る」姿を思い浮かべながら聴くとちょっとグッときますね…

2曲目「MOON SICK」
源くん本人が「夜遊びの歌です」と解説していますが、その夜遊びしている時に陥りやすい変なテンションの高さが楽曲のリズムやムードに反映されているっぽいなぁ…と感じました。少しジャズっぼい部分があったり、夜遊びして楽しいんだけど後ろめたさや背徳感も少し感じていることが窺える歌詞もイイですね。ちなみに源くんがサックスの武嶋さんのことを「カモン!タケちゃん」って呼ぶところは、ユニコーンの名曲「人生は上々だ」の民生さんが間奏でギターの手島さんを呼ぶことへのオマージュかな?

3曲目「いちにさん」
全ての楽器を源くんが担当している意欲作。特典DVDでレコーディングの様子が観れましたが、特にデモテープなどを作るのではなく、自分の頭の中にあるアイディアを次々と試しつつ作品を仕上げていく様は「あぁ、流石だなぁ」と感じずにはいれませんでした。本人は解説で「しゃっくりを止める歌」って言ってますけど、それだけじゃなくて何かのメタファーとしてこの歌詞を書いたんじゃないかなぁ…と深読みしてしまいました。個人的にはしゃっくりを止める時に行う努力と、何かの問題や試練に直面した時にどう対応するか?というのを引っ掛けてるんじゃないかと感じたんですけど…気のせいかもしれませんが(笑)

4曲目「マッドメン(House ver.)」
源くんのシングル恒例の宅録楽曲。これまでハウスバージョンでの楽曲は割としっとりと弾き語る曲調のものが多かったですけど、少しアップテンポでアコギを激しく弾くような楽曲だったのは新鮮でした。この楽曲はソウル/ファンクミュージックの影響が濃い気がしましたね…少し初期のキザイア・ジョーンズっぽいっていうか。格好イイ曲です‼︎


以上のような素晴らしい楽曲4曲が収録されたシングルでした。しかし単純に考えて「STRANGER」以降に発表されたシングルが全て新しいアルバムに収録されるとしたら、「ギャグ」と「地獄でなぜ悪い」と「CRAZY CRAZY/桜の森」とこのシングル「SUN」の5曲は確定ですから、近い将来制作&発売されるであろう新しいアルバムは凄いアルバムになるはず‼︎と1人で盛り上がってしまいました。本当にそのアルバムを早く聴きたいですし、心待ちにしたいと思います。

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シェフ 三ッ星フードトラック始めました

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ジョン・ファブロー監督/主演作品の「シェフ 三ッ星フードトラック始めました」を観た。こういう作品を上映してくれるようなシネコン(TOHOシネマズ おおいたアミュプラザ)が出来たのは素直に嬉しい。

ジョン・ファブローのことは主演・脚本を務めたインディーズ映画「スウィンガーズ」で知りました。確か映画館で観たんじゃなかったかなぁ…今はなきシネテリエ天神かKBCシネマだったような記憶があります。「スウィンガーズ」はなかなか面白い作品だったんですが、それ以降彼の出演作を観ることはありませんでした。そして次に彼の名前を目にしたのは、アメコミ原作の大ヒットシリーズ「アイアンマン」の監督としてでした。「いつの間にこんな出世しちゃったんだ!」と驚いたのを覚えています。

今回の作品は久しぶりにインディーズ系作品での監督作品らしいですが、「アイアンマン3」の監督をせずに(製作総指揮は務めているみたいですが)この作品を作った経緯がまるで作中の主人公カール・キャスパーそのものですね!所謂大ヒットフランチャイズ作品での監督というのは、この作品の中で描かれていた雇われシェフのようなものでしょうし…恐らく自身の表現・クリエイティブな発想などを作品に反映するのは規模が大きくなればなるほど難しくなるでしょうからね。ですから物語後半のカール・キャスパーが料理することに再び喜びを感じるようになった姿は、ジョン・ファブロー本人がインディーズ作品に戻って「誰にも口を出されずにやりたいことを俺は出来てる!嬉しい!楽しい!」っていう喜びを感じているであろう姿に重なって見えました。それと雇われシェフの時にレストランで出していた定番メニューよりも、フードトラックで出していた
キューバサンドイッチ(食べたい!)や、ベニエの方が遥かに美味しそうに描かれていたのは皆が気づく点でしょうが、これも「こちら(主人公の原点ともいえる料理/ジョン・ファブローにとってのインディーズ作品)が俺の愛する方だ」と宣言しているように思えました。

キャストについて。ジョン・ファブローはもちろん凄く良かったんですが、何と言っても息子役のエムジェイ・アンソニーくんと元妻役のソフィア・ベルガラが抜群に良かったです。可愛い今時の若者っていう感じの息子と外見も内面もイイ女の元妻。最近のアメリカ映画には欠かせなくなっているSNSが効果的に使われ(そのやり方を息子に教わるのがリアリティーありますよね)ていました。息子と元妻の2人と徐々に心が通っていき関係を取り戻していく様も見ていて微笑ましくて応援したくなりましたね
あと料理の右腕役のジョン・レグイザモも久しぶりに観たけど良かったなぁ。義理堅いラテンの陽気な男って感じが凄くハマってた。あと「アイアンマン」シリーズでジョン・ファブローとは旧知の仲のスカーレット・ヨハンソンとロバート・ダウニーJr.の2人の起用は、それらの背景を知っている人にとってはニヤッとするところでしょうね。スカーレット・ヨハンソン、珍しくストレートに凄く格好いい女性役でした。レストランのオーナー役のダスティン・ホフマンと、料理評論家役のオリバー・プラットも出番は少ないながらもいい存在感でした。この2人が根っからの悪人として描かれてなかった(彼らは彼らで自分の仕事を全うしているだけですし、そもそもカール・キャスパーが職を失ったり話題の人になったりするのはSNSでの大失態による自業自得な部分が大きいですからね)のも観ていて凄く気持ちいい部分でした。

音楽も本当に素晴らしかった。特にマイアミパートで使用されるキューバ音楽が最高!元妻の父親役のミュージシャンのおじいちゃんの格好よさったら!あんな格好イイおじいちゃんに憧れますね。しかし最近観た映画の音楽の格好良さの打率が8割という信じられない当たりなので、サントラ欲しくなって困ってます(笑)「君の生きた証」、「はじまりのうた」、「バードマン」、そしてこの作品。全部サントラ欲しい!

とにかく作品を観終わった時に感じた爽快感は今年観た作品の中でも1、2を争うくらいでしたし、間違いなく感じた空腹感はぶっちぎりで1位でした!
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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

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本年度アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞受賞作品である「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」。
ようやく観ることが出来たんですが、期待していたこちらの想像を遥かに凌駕する大傑作!「芸術性・娯楽性・批評性が素晴らしいバランスかつ高いレベルで表現されている稀有な作品」だと感じました。今回はその芸術性・娯楽性・批評性について言及してみたいと思います。

まず芸術性について。演劇の舞台裏を見せる映画はこれまで数多く観てきました。その中には名作も多く(トリュフォーの「終電車」や、カサヴェテスの「オープニング・ナイト」など)、それらの作品に共通するのが「舞台上で演じている物語と、演じる俳優の実生活・感情が入り混じってしまう」という構造です。多分に漏れずこの作品もその構造になっており、それがこれまでなかった方法で提示されます。それに貢献しているのが「ゼロ・グラビティ」での素晴らしい撮影で世界を驚愕させたエマニュエル・ルベツキ。驚くべきことに、この作品は「ゼロ・グラビティ」の冒頭17分間のワンショット長回し(何回観ても感動する映画史に残る名シーン!)を作品全編で敢行したある意味とても過激で実験的な作品だといえます。まぁ勿論全編ワンショット長回しではなく、限りなくそう見えるように緻密に計算されたカメラワークと編集による繋ぎ方なんですけども、芸術性という意味において非常に意義のあるチャレンジだと思いました。
あと基本的にドラムの音のみで製作された音楽の素晴らしさも芸術性に貢献していると感じました。ドラムというのはとてもプリミティブ(原始的)な楽器でその音は演奏者自身をダイレクトに表すものですが、アントニオ・サンチェスの奏でるドラムの演奏の豊かさや閃きは間違いなくこの作品をネクスト・レベルに引き上げることに成功させた一因だと言えるでしょう。主人公の置かれた状況・焦り・葛藤・苦しみを見事にドラムの音のみで表現していたと思います。

娯楽性について。「ヒーロー映画で有名になった映画俳優が、再起をかけてレイモンド・カーヴァーの短編を舞台化し脚本・演出・主演する」という設定と、その主人公を演じるのが実際に映画でバットマンを演じたマイケル・キートンだというのがまず素晴らしいアイディアとキャスティングですよね。そしてマイケル・キートンの演技はパロディーや自虐ネタにおさまらない素晴らしいものでした。他のキャストも「売れない女優役」の第一人者(笑)で、かつては自身もそういった境遇だったナオミ・ワッツ(あるシーンでは「マルホランド・ドライブ」を思い起こさせるようなシーンも!)や、舞台上でのリアリティーを追求し過ぎるためにエキセントリックで騒動を引き起こす自己中俳優を演じたエドワード・ノートン(「ファイトクラブ」での彼が憧れたブラピのような立ち振る舞いや言動に興奮!)、凄く複雑で繊細な感情を抱いていることを上手く演じていた薬物治療施設から退院したばかりの主人公の娘役のエマ・ストーン、偏見に満ちて特権階級的な立ち振る舞いをする本当に嫌な評論家役のリンゼイ・ダンカン。皆素晴らしい演技でしたね。特に個人的にはエドワード・ノートンエマ・ストーンの2人は本当に素晴らしかったと思います。アカデミー賞の助演男優賞や助演女優賞はこの2人で良かったんじゃないか…と思うくらいに。

最後に批評性について。この映画が批評しているものはヒーロー映画ばかりがヒットし製作される映画界の現状とそれをもてはやす人々、独自の価値観を持つ演劇界、大きな影響力をもつ評論家、そして評論やSNSなどの情報により芸術や作品を判断しそれに左右される大衆だと感じました。まぁつまり僕を含む世界中の大多数の人たちがターゲットなわけです(笑)
個人的には評論家に対する批評性が興味深かったです。確かにある一部の評論家の持つ影響力は、作品の出来や意義に関係ないところにまで及ぶことがありますから、アーティストにとっては大きな脅威でありある意味で天敵だと言えるでしょう。この作品においてリンゼイ・ダンカンが演じる批評家の評論はありきたりの表現(「未熟」、「無味乾燥」、「中身がない」等)を使い、主人公が指摘するように「批評を書くだけで何ひとつ代償を払わない」人物として描かれています。それでいて演劇界ではこの人物の評論でロングランになるか打ち切られるかの影響力があるという歪さ。実際にモデルになった人物がいるかどうかはわかりませんが、とても皮肉が効いていて考えさせられました。権威や知識に弱い大衆は、そういった人の意見に左右されやすいですからね…その後主人公が舞台上でとったとんでもない行動について、勝手に解釈をつけて絶賛する文章(その文章の表現もかなり陳腐なんですが)を寄稿するところもかなり皮肉が効いていました。

かなりの長文になりほとんど賛辞ばかりの文章になってしまいましたが、この作品がアカデミー賞作品賞を獲得したことは素直に素晴らしいことだと感じます。そしてこの映画は間違いなくアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の最高傑作で劇場まで足を運んで観る価値がある作品だと思います。ただかなりクセが強い作品なので、決して万人向けとはいえませんが…


「セッション」にまつわる論争と個人的感想、そして音楽映画について

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映画「セッション」についてジャズミュージシャンであり文筆家でもある菊地成孔さんが自身のブログで内容・音楽についての酷評文を発表したところ、映画評論家の町山智浩さんがそれに反論する形で自身のブログで「セッション」を擁護する文章を発表しかなりの話題となりました。何せYahoo!のトップニュースに載りましたからねぇ。そして何回かお互いに反論文を掲載したので、ちょっとした論争やネットでの反応もあったようです。そのほとんどは町山智浩さん支持だったようですが…

個人的にお2人の文章は好きで以前から読んでいました。前々から売られた喧嘩の買い方(勿論文章でという意味で)や相手を論破するスタイルが似ているなぁ…と思っていたんですが、まさかこの2人が直接対決するとは!と驚きながらも、まだ映画「セッション」を観てなかったので一番話題になっていた時には文章が読めない状態でした。しかしやっと先週「セッション」を観たので、お2人のブログの文章を読むことが出来ました。それを読んだ感想と、自分が映画を観て感じたこと、あと「セッション」が音楽映画と呼べるのだろうか?という3点について考察したいと思います。

ます菊地成孔さんと町山智浩さんの文章を読んだ感想は、どちらの言い分にも同意できる部分と「それはあまりに偏りがある考えで決めつけが酷いんじゃないだろうか?」という部分が混在しているなぁ…というものでした。
菊地さんのジャズミュージシャン/映画を愛する文筆家としての立場から、いかに「セッション」がジャズ映画としてもスポ根映画としても出来が悪く、おまけに主人公のドラムも全くグルーブ感のない手数が多いだけのプレイであるか、また音楽考証もデタラメであるということをジャズを生業にしているプロとして苦言を呈しているといったことが掴めました。ただ単に「こんなスパルタな教え方する訳がないだろ!ジャズが侮辱された!許せん!」的な短絡的な怒りではないことがよくわかりました。
一方町山さんの文章では「菊地さんがあんな文章を発表する(しかも映画公開前に)と「じゃあ観なくていいや」と考え実際そうする者が出てくる。この小規模な傑作映画を潰す気か!自分の影響力を考えてくれ!」という論調で、ジャズについては専門家である菊地さんが何と言おうとこの映画を支持するという気概が伝わってきました。それに音楽考証や大学でのジャズ教育が事実と異なっているとしても、最後の演奏シーンでこれまでの「恐怖と憎悪」が音楽を通して消えて昇華していくから素晴らしい作品だ!だから菊地さんが何と言おうとも、そこで感動したことは恥ずかしいことでも何でもないんだ!ということも強調されていましたね。
お2人の意見はその筋の専門家としての立場からとても貴重でわかりやすいものだったと思います。ただ若干町山さんの方が分が悪かったかな…とは感じますが。菊地成孔さんはプロのジャズミュージシャンですから当然リズム感や音楽についての造詣がとても深いですし、映画についても一言ある文筆家です。多少文章が長くて読みづらいという部分はあるにしても、その評論はかなり的確だと思います。一方の町山さんはプロの映画評論家でその知識の多さは他を圧倒するほどですが、ことジャズについてはご自身で「ジャズ素人」と書いておられるようにジャズについては明るくないようですし。あと町山さんは映画に対する偏愛的な側面があるように思えます。例えば作品の整合性や考証よりも自身が感情移入できたり熱狂した映画を支持する傾向もあるようにみえますので、そこはこの2人の大きな違いだと思います。そのズレが生じさせた論争だったのかなぁ…と感じました。

次に僕個人が映画を観た感想です。正直観終わった時は「凄い衝撃的な作品だったなぁ…」と感じましたが、もう観なくてもいいやとも感じました。確かに素晴らしい作品でももう観たくないと感じる作品というのもありますが、そういう類の感情とは少し違いました。映画を観ていて僕個人は映画的なカタルシスをあまり感じませんでした。むしろ苦しい・怖いという感情にさらされた印象が強いです。ちなみにホラー映画は大の苦手ですが、そういった作品を観終わった時に感じる感情に近かったかも知れません。あと個人的にはこの映画のテーマが「支配する側/される側の心理と駆け引き」、「恐怖と憎悪と復讐心」、「承認欲求と肥大するエゴ」だと感じましたので、そういうネガティヴな感情を扱った作品は一回観たらもういいかな…と感じたのかもしれません。

最後に「セッション」は音楽映画か?という点ですが、これにはハッキリとNO!と言いたいと思います。映画と音楽を同じくらい愛する者の1人として、これが音楽映画だとは認めたくありませんし、ジャズという音楽に敬意と愛情を持つ者として「この作品、ジャズをとても良く描けているなぁ…」と肯定する気もありません。あと先回のブログで取り上げた「はじまりのうた」のような音楽の救済する力を信じ、それを演奏・製作することによる喜びや癒すという側面を全く感じない作品でしたので、音楽映画とは認めたくないですね。確かに音楽は魅力的な一方で破壊的で危険な一面も持っていることは重々承知してますが、それにしてもやり過ぎでは…という感じですかね。
ただ「セッション」は映画としては魅力的な側面(役者の演技や存在感、あと脚本の巧みさ等)を持っているので、この作品に関心・興味のある方は観ても損はないと思いました。

「君が生きた証」と「はじまりのうた」

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先週久しぶりに映画をハシゴして観ました。しかもたまたまですが、どちらも音楽が重要な部分を担っている作品。

まず先に観たのはウィリアム・H・メイシー初監督作品「君が生きた証」
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テーマがかなりヘビーで色んなことを考えさせられる作品でしたが、とにかく音楽と演技の良さで最後まで目が離せませんでした。あまり詳しい話をするとネタバレになってしまうので、そこに触れずにこの映画について語ろうとすると肝心なテーマに触れられないという少し解説・感想が言いにくい作品です。なので監督の演出・役者の演技・音楽についての感想を述べたいと思います。
まず監督の演出ですが、初監督作品なのにあまり迷いがない感じがしました。流石名監督たち(PTAやコーエン兄弟)の作品に出演している名バイプレイヤーですね!幾つか登場人物の心情や行動の動機がわかりにくいシーンがありましたが、作品の流れ上仕方ないのかなぁ…とも思いますし、あと2〜3作品くらい監督するともっと熟練して語り口も巧みになっていくような感じがします。
次に役者の演技ですが、主要キャストの演技や演奏・歌は本当に素晴らしかったと思います。ビリー・クラダップはかなり複雑な状況に置かれて、かなりヘビーな心情を抱えている主人公を見事に演じていたと思いますし、何と言っても演奏・歌が素晴らしかった!若いバンド仲間になるアントン・イェルチンや、主人公の別れた妻役のフェリシティ・ハフマン(監督の奥さんですね)、ローレンス・フィッシュバーンも見事な演技でした。
音楽の素晴らしさについては何も言うことはありません。この作品の性質上、音楽がショボかったら作品自体台無しになりますが、観た後に何とも言えない余韻が残るのは劇中で演奏される音楽が素晴らしいからだと思いますし、特に最後にビリー・クラダップが1人で弾き語る曲の歌声や歌詞(特にその曲を演奏する前のMCや、曲の完成した背景を考慮に入れると)が胸に迫るものがありました。演奏が終わってエンドクレジットが流れた後に、主人公がこれからどういうふうに生きていくんだろう…と思わざるをえない深い作品だったと思います。


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(↑このシーン、大好きでした!)

続いて観た作品は「はじまりのうた」。
監督は大好きな作品「ONCE ダブリンの街角で」のジョン・カーニー。主演はキーナ・ナイトレイとマーク・ラファロ。こちらは原題の「BEGIN AGAIN」からも読み取れるように、主演の2人が陥っているどん底の状況から音楽を一緒に制作していくことを通して徐々に立ち直っていき、目を背けていた問題にも向き合い、前に進み出す…といった作品で観た後の爽快感が実に気持ち良い作品でした!音楽が好きで、それによって救われたことがある人ならきっと好きな作品だと思いますし、音楽の力をきちんと信じて真正面から捉えている愛すべき作品だと感じました。間違いなく今年の映画ベスト5にランクインするであろう大傑作‼︎
役者について。主演のキーナ・ナイトレイ、これまであまり好きではありませんでしたが、この作品の彼女は凄くキュートでしたし、歌声も素晴らしかった!そしてもう1人の主演(と言ってもいいと思います)マーク・ラファロは、前にブログに感想を書いた「フォックス・キャッチャー」の兄役とまるで別人でしたし、演技も相変わらず最高で観ていて楽しかったですね。よく考えたらかなり複雑で難しい役だと思いますが、それを全く感じさせないくらい軽々と演じている(ようにみえる)のが凄い。あとはマルーン5のアダム・レビーンも演技初挑戦だと思えないくらい上手かったし、マーク・ラファロの娘役のヘイリー・スタインフェルド(「トゥルー・グリッド」の主演の女の子)も無愛想→素直になっていく様が可愛らしくて良かった。
そしてこちらの作品も音楽が本当に素晴らしかったですねぇ…個人的には「君が生きた証」よりも好きです!早くサントラ入手したいと思っています。

星野源 横浜アリーナ Two Beat ドキュメンタリー「横浜の星〜アリーナ史上初の奇跡〜」

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Blu-rayの映像特典「横浜の星〜アリーナ史上初の奇跡〜」。それにまつわるエピソードと内容の感想について書こうと思います。

「ツービート」本編を観終わってから、映像特典を観る前にブックレットでクレジットを確認していたら、「横浜の星〜アリーナ史上初の奇跡〜」の監督が坂本あゆみさんだと知ってビックリしました!坂本あゆみさんは去年観た邦画で個人的にベストだった「FORMA」で長編デビューを飾った監督です。「FORMA」はかなりラディカルな作品(何せクライマックスシーンは20分以上の長廻し!)ですが、ストーリーや編集、そして何よりも脚本とカメラワークが本当に素晴らしくて、145分全く飽きさせない作品でした。坂本あゆみ監督の次回作もとても楽しみにしています。

話を「横浜の星〜アリーナ史上初の奇跡〜」に戻しましょう。その坂本あゆみさんが監督だということで、かなり期待値が上がった状態で観たんですが…当たり前ですが「FORMA」とは全然テイストが違う作品でした。まぁそりゃそうですよね、題材が題材ですから(笑)。
ぶっちゃけネタバレになりますが、ライヴ序盤で源くんがウ○コするためにトイレに行くというハプニングと、舞台上にいなくなった主役の不在をバンドメンバーが機転を効かせて即興で繋ぐという2つの出来事を、関係者の証言やその時の映像を基にドキュメンタリータッチで描いた作品でした。スタッフ、バンドメンバー、ライヴを実際に観に来ていた芸能人の証言、舞台裏の映像、そして即興で演奏された曲「トロピカルアリーナ」(笑)
ただある場面で「あっ、これ「FORMA」っぽい!」と興奮した部分がありました。それはトイレに行くために裏に引っ込んだ源くんの様子と、主役不在の舞台上に残されたバンドメンバーの様子を画面を2分割して同時に観せたパートでした。坂本あゆみ監督の特色というかテイストを感じましたね…

スタッフとバンドメンバーの証言、本当に真面目に答えていたのが凄く良かったです!その意見の中には星野源という人物の分析になっている答えがあったり、またその人の源くんに対する想いや愛情が感じられるものがありました。特に盟友の伊藤大地くんの答えはやっぱり付き合いが長いだけあって、かなり的確だと思いましたし、伊賀さんや長岡亮介さんの証言は温かくてお二人の人柄が窺い知れるものでした。あとは理学博士の澤口先生(さんまさんの「ホンマでっか⁉︎」に出てる先生です)の答えも興味深かったなぁ…ただ音楽ライターのアダム・シンクレアのインタビュー部分は、恐らくフェイク・ドキュメンタリーだと思います。ウディ・アレンが「ギター弾きの恋」(大好き!)で取った手法ですね。

映像特典まで楽しいBlu-rayでした。